男に化けて姫の閨に通う名馬
どんな伝承か
春の花見の場に殿様が来たが、子のない長者夫婦は二十一日のあいだ馬頭観音に子宝を願掛けした。どんな性の子でもよいと答えたので授かり、生まれた娘をおしめ様と名づけた。長者は江戸から千段栗毛の名馬を買い求めるが、馬は十九、二十歳の男に身を変え、晒の手拭を肩にかけて夜ごと二階の梯子を上り、姫の納戸へ通った。畜類の道ゆえ契りは結べぬと歌を交わしたのち、馬は何も食わぬ病となる。占いで恋煩いと知れ、長者は千駄が河原の桂の下に鳥居を建てて馬を繋ぎ棄てた。三月十六日、神楽に詣でた姫が馬を尋ねて歌をかけると、雨風が起こり天竺から黒雲が下りたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。