黒狐の祟りを記す渡島筆記
どんな伝承か
『渡島筆記』が記す黒狐の一条である。二十年ほど前、松前大炊の代にシリウチという山に黒毛の狐がいた。その皮で裘を作ろうと家臣が撃とうとすると、あたりが暗くなって姿が見えない。改めて遣わされた厚谷伴蔵は数日探して見つけ、お前を殺すのは主命であって私事ではないと告げると靄が晴れ、狐を仕留めた。肉を食べた中津源兵衛は雷が聞こえなくなり数年で病死し、伴蔵も悪疾で死んだ。皮は夜ごと狐が返せと乞い、やがて自ら裂けて用をなさなくなった。狐は自分は花山院家から来たものだと語ったとも伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。