津軽に流れ着いた唐糸の遺骸
どんな伝承か
『秋田風土記』が伝える一条。鎌倉の執権北条時頼は康元元年に剃髪して道崇と改め、諸国を巡って治乱の国風を知ろうとした。津軽の地に至って海辺を通ったとき、一艘の異船が漂着し、浦人が引き上げると女の死骸があった。まとっている絹は時頼であったころの愛妾の服に似ており、讒言する者に貞操を犯されまいとして佞臣らに空船で海へ捨てられた、と記して唐糸と署名した一封の書が添えられていた。道崇は深く憐れんでこの地に厚く葬った。津軽外ヶ浜のことで、今も墓があるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。