白羽の矢が降った矢頭山の開山
どんな伝承か
矢頭山は今から千二百六十余年の昔、文武天皇の御代に役ノ小角が開いた霊山だという。ある晴れた日、小角が天の一方を眺めていると、俄かに二本の白羽の矢が飛び下りてきて山の峰をかすめ、麓の里に降下した。それから小角はこの山を矢頭山と称えて尊崇し、矢の降下した所を矢下と名づけたという。矢頭の本尊は蔵王権現を祀り、盧遮那仏の霊地ゆえとっこの丘ともいう。小矢頭は不動尊、南ヶ峰は大日如来を祀って丑ヶ峰とも称す。馬ヶ谷から一キロあまり離れた奥ノ院には、幅三メートルの岩石に丈六の権現像を彫刻したものがあり、役の小角の作と伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。