蚊帳を吊らずに眠れる庄屋の一間
どんな伝承か
池田市畑に、釈空海が蚊を封じたという旧屋が伝わる。東畑村の庄屋・太兵衛の居宅で、家伝によれば、空海が諸国を遍参する途中この家に立ち寄った。折しも水無月半ばの極暑で、亭主は蚊が群がるのに苦しんでいた。空海がこれを封じて憂いを止めたところ、今なお封じた一間だけは蚊帳を垂れずとも安らかに臥すことができ、襖一重を隔てた隣室では他所と変わらず蚊が群がるという。その妙なることは後世まで残り、家内でこれを分けているのが奇であると『摂津名所図会』は記す。別書には、大師が一夜の宿を乞うたが誰も貸さず、ようやく宿を貸した家に礼として蚊を封じたとも伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。