千里浜の水に報いた熊岡の井戸
どんな伝承か
南部川村の熊岡は小高い丘の上の在所で、昔から水の不便な所である。古い熊野御幸道に当たっているので、いろいろな人が通ったはずである。ある時、弘法大師が通りかかって一軒の百姓家で水を求めた。留守居をしていた老婆は、この辺りは水の悪い所ゆえしばらくお待ち下されと言って、わざわざ千里の浜まで出かけ、清らかな水を汲んで来た。大師はその心根をあわれみ、気の毒なことじゃ、この辺によい水を湧くようにしてやろうと言って、杖でこつこつと穴を掘った。穴からはこんこんと美しい水があふれ出て、どんな日照りにも涸れることはないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。