棺を守った増雲和尚と片目の古猫
どんな伝承か
児島郡甲浦村の字郡に、円蔵院という古い真言宗の寺がある。百年ほど前、増雲という和尚がいた。夏の昼寝の折、縁の下で寺の赤毛の雄猫と見知らぬ古猫が、村の誰それが死んだと話し合うのを聞いた。まもなく檀家が葬儀を頼みに来たので、和尚は寝棺にし、供の者は雨具を用意せよと申し付けた。晴天だったので村人は笑ったが、葬列が出るとにわかに暗くなり、雷雨となった。和尚は棺の上に座して水晶の数珠を振り、心経を唱えて妖魔を退けた。のち和尚は、山奥の三分池に美女の姿で出る化物の退治を鉄砲の名人に頼み、撃たれたのは片目のつぶれた古猫であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。