衣を借りた猫の恩返し
どんな伝承か
貧しい寺にひとりで暮らす和尚が、寂しさからふじ猫をかわいがっていた。法事の帰りに辻堂がざわめくのを節穴からのぞくと、集まった猫たちが、和尚の衣が手に入らずふじ猫が来ないので今夜の芝居にならないと話し合っている。その夜、寝たふりをしていると、飼い猫は衣を持ち出し、戻ってきて元どおり掛けた。和尚は猫に暇を出す。やがて大山のふもとの分限者の老人が死ぬが、大夕立が五、六日も続いて葬式が出せない。墨染めの衣の僧が現れ、空也別所の和尚でなければ葬れないと告げ、そのとおりにすると滞りなく葬式が済んだ。和尚は多額の礼を受けて寺を建て直した。猫の恩返しだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。