偽の嫁入りで藩主を国替えにした白狐初連
どんな伝承か
今から二百年ほど前、刈谷の恩田にある松雲院の境内の洞穴に初連という白狐が住んでいた。住職に可愛がられ、通力は豊川稲荷の狐にも勝ると言われた。住職の幽石和尚が眼を患ったときは、小僧に化けて医者から薬を受け取り、子狐の目に塗っていたこともある。刈谷藩主三浦侯の供の者が子狐をいじめたことを恨んだ初連は、奥州の大名の姫が刈谷藩へ嫁ぐ際、仲間の狐を集めて偽の嫁入り行列を仕立て、自ら姫に化けて乗り込んだ。湯殿で白狐の正体を家老に見破られ、この騒ぎが将軍家に聞こえて三浦侯は領地半減のうえ国替えとなった。和尚に責められた初連は箱根へ去ったが、後には三浦侯の行列を守り、維新のころ恩田へ戻って死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。