穴滝の大欅を切った村人と涙の女
どんな伝承か
北設楽郡段嶺村の田峯に伝わる話。この地の頭山に穴滝という小さな滝があり、そのそばに十抱えもある欅の大木が立っていた。欲の深い村人が金に換えようとこの木を切り始めたところ、ふと気づくと横に美しい女が立ち、名残惜しそうに木を見上げて目に涙を浮かべていた。女はほどなく立ち去り、村人はなお切り続けたが、さっきの女はこの木の主ではないか、もしや大蛇の化身ではないかと思い至ると急に恐ろしくなり、慌てて家へ逃げ帰った。その夜から病みつき、間もなく死んでしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。