鳳の久保で大蛇を焼いた木樵たちの祟り
どんな伝承か
南設楽郡鳳来寺村、いまの鳳来町に鳳の久保と呼ぶ深い谷間がある。幾千本という大木が茂る昼なお暗い密林で、山慣れた村人でも入るのをためらう場所だという。あるとき塩の谷部落の木樵四、五人がここで木を切り、大きな樫の古株に生木を詰めて火をつけて帰った。翌朝行ってみると古株は燃え尽きて灰の山になっており、何気なく灰をかき回すと生臭い臭いが湧き、骨や牙が出てきた。木樵たちは震え上がって逃げ帰り、その夜から高熱にうかされ、熱のなかに大蛇がのたうつ姿を見た。鳳来寺から行者を呼んで占うと、千年以上経った生虫の祟りだという。そこで灰を石棺に納め、浄障無垢大明神の神号を貰って祀ったのが、俗にいうあかなし様である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。