乙姫が献じた菟足神社の雌雄の鐘
どんな伝承か
小坂井の菟足神社は白鳳十五年創立と伝える東三河屈指の古社で、国司や将軍の崇敬を集めた。国司大江定基が風祭で生きた猪を料理するのを見て世をはかなんだ話も残る。宝物の鐘には応安三年の銘があるが、昔この社の前は入り海で、夜ごと水に映る社の灯があまりに美しいので竜宮の乙姫が雌雄一対の鐘を献じようとした。雄の鐘は社の南の上池から掘り出されたが、雌は出るのを嫌って地中深く隠れ、雄を撞くと地中で雌が応えて鳴るのが聞こえるという。安元元年の大般若経は、今橋が大水で落ちて七日間滞在した武蔵坊弁慶が書いて奉納したものだと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。