扉を開けて目を失った男と盲目の大蛇
どんな伝承か
旧両神村の大字薄にある薬師様は、弘法大師が薄の株から作ったと伝わり、毎年一月八日の大祭には近郷から大勢が集まる。本体を納めた堂の扉は決して開けてはならず、見た者はたちまち目が潰れるとされていた。何事にも人と逆を言う「変り者」の男が、止める村人を振り切って扉を開けると、両目が閉じたまま開かなくなった。笑いものにされた男は死を決意し、手探りで近くの二丈ほどの橋へ行って身を投げた。五年後、橋のそばの欅の根元に、目の開かない大きな青大将がとぐろを巻いているのが見つかり、村人は執念深かった男の化身だと語り合ったという。
原典より
秩父郡両神村大字薄に、今も人々から厚い信仰を受けている薬師様があります。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。