産を助けた老婆に懐いた白狐
どんな伝承か
向島小梅町の三囲神社は、三囲稲荷とも田中稲荷とも呼ばれる。元禄のころ、その境内に正直な老夫婦が住んでいた。ある夜、近ごろ伏見から越してきたという男が戸を叩き、妻が産気づいて苦しんでいると助けを求める。老婆が出向いて介抱すると男子が生まれたが、翌朝訪ねてみると、そんな家はどこにもなかった。数日後、庭先に女狐が死んでおり、白い小狐が骸につきまとっていたので、夫婦はこれをわが子のように育てた。狐は老婆の呼び声に応じて吉凶を占い、よく当たると評判になって社は大いに賑わったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。