寂しい春宮を嫌う神のお舟祭り
どんな伝承か
下社で毎年八月一日に行われるお舟祭りには、こんな言い伝えがある。下社の神は夏を涼しい春宮で、冬を暖かな秋宮で過ごすとされ、二月一日に秋宮から春宮へ、八月一日に春宮から秋宮へと住まいを移す。春宮はひっそりした所なので、神は寂しがって気の進まないまま移り、二月の祭りは神輿が渡るだけの静かなものになる。ところが秋宮はにぎやかな所なので、神は喜んで帰ってくるため、八月の祭りは大きな芝舟を氏子が引く盛大なものになるのだという。舟は諏訪明神が湖で漁をして遊ぶ姿とも、岸辺の田畑を見回る姿ともいわれる。
原典より
春宮は閑静なところなので神様は淋しいからとしぶしぶお移りになるので、祭りも御神輿の渡御だけの静かな祭り。—— 信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年))
『信州七不思議』は、降幡利治が昭和五十九年に著した信州各地の七不思議を集めた本である。諏訪大社上社と下社の御神渡りや筒粥に始まり、松原湖、生島足島神社、川中島古戦場、志賀高原、浄光寺、雲上寺、立石など県内各地に伝わる七不思議を、町村誌などの資料と聞き取りをもとに記す。各地の七つの事柄を箇条に掲げて関わる社寺や史跡の解説を添えるガイド風の構成で、序では越後の人が信州人の気質を評した七不思議を紹介する。