誰もいない森に響く天狗の木倒し
どんな伝承か
志賀高原の奥深い森林に入っていると、「カツーン・カツーン・ギーギギー・ドッスーン」と、大木をまさかりで打ち倒すような音が聞こえてくることがある。ほかに山へ入っている者はいないはずだと音のした方へ行ってみても、あたりはしんと静まりかえり、切り倒された木もない。気のせいかと思っていると、また別の方向で同じ音がする。行ってみてもやはり跡形もなく、恐ろしくなって逃げ帰ったという。ムジナの仕業だという者もあったが、ムジナにあれほど巧みな真似ができるはずはない、あれは天狗だといい、この不思議な音を「天狗の木倒し」と伝えている。
原典より
あれは天狗だと、その不思議な音のことを「天狗の木倒し」と伝えている。—— 信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
信州七不思議(降幡利治・1984年(昭和59年))
『信州七不思議』は、降幡利治が昭和五十九年に著した信州各地の七不思議を集めた本である。諏訪大社上社と下社の御神渡りや筒粥に始まり、松原湖、生島足島神社、川中島古戦場、志賀高原、浄光寺、雲上寺、立石など県内各地に伝わる七不思議を、町村誌などの資料と聞き取りをもとに記す。各地の七つの事柄を箇条に掲げて関わる社寺や史跡の解説を添えるガイド風の構成で、序では越後の人が信州人の気質を評した七不思議を紹介する。