額を突いて小冠者を倒した鬼大夫
どんな伝承か
日田郡の擬大領大蔵永興の長男鬼大夫永季は、大岩を畳むほどの怪力で知られた。延久三年、十六歳で宮中の相撲の節会に召され、鉄の膚を持つという出雲の小冠者と取り組むことになる。上洛の途中、太宰府近くの川辺で童女に呼び止められ、小冠者は母が身ごもった折に甘瓜を一度食べたため額だけが柔らかいこと、試合では乾の方角を見よと教わった。苦戦の中で乾を仰ぐと、宙に童女が現れて額を押さえて見せ、鬼大夫はその額を突いて勝った。帰郷後は大肥庄に老松大明神を建てて天満宮の神霊を迎えた。晩年、節会の帰りに病に倒れ、領内に入ってすぐ息絶えた地が村薄と呼ばれるようになったと伝わる。
原典より
そのうち、鬼大夫は、ふっと童女の言った言葉を思い出し、乾の方角を見ますと、以前の童女が虚空に現われ、右手で額のあたりを押さえていました。—— 大分県の民話 第2集(土屋北彦・大分県の民話) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第2集(土屋北彦・大分県の民話)
『大分県の民話 第2集』は、土屋北彦による大分県の民話集である。日田の鬼大夫永季、府内の山弥長者、柞原八幡縁起、小豆研ぎ、百合若物語りなど、県内各地の長者譚・社寺の縁起・人柱・妖怪・英雄の伝説を、古代から江戸時代までの年号や現在の市町村名を添えて語り直す。三十二話を一話ずつ題を立てて並べ、多くは「です・ます」の語りで、方言による短い昔話も交じる。