唐桑御崎の突端に立つ尾崎明神
どんな伝承か
繁華な気仙沼の湊町を足がかりに、附近の変化に富む海端を歩いた。湾の対岸の大島は全国に多い大島の中でもことに土着の古いもので、平地の表面は全部人の手で整理された、記録文書からは超越した平穏無事な農村であった。島の北部には高い峰があって、山と海の風光を総攬する。東面にはわずかの水を隔てて唐桑の御崎が横たわる。松の伸びと生長した岡で、その突端にはこの地方の信仰の一中心である尾崎明神の社がある。広い境内の松林は絶壁の上に臨み、参拝した八月半ばには杜若や透し百合が海を背景として一面に咲いていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。