働く女たちの緋色のかぶり物
どんな伝承か
鹿角郡などの最も草深い田舎を歩くと、華やかな笑い声よりも先に目に入るのは、働く女たちの緋色や牡丹色などのかぶり物である。全身を現して路を歩いて来るのを見ると、袖口でも腰巻でも、北地へ行くほど彩色が島に近くなる。こうして若い人の注意を引きつけようとするほかに、自分がまず緑の圧迫に堪えられないから、何とかして彩ってみる気になるのかもしれない。それが無意識ながら広い天然と調和して、夏の淋しさを和らげ、また女性を欠くべからざるものにしたかと思われる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。