境木越の狼の大群
どんな伝承か
和野の佐々木嘉兵衛が、ある年、境木越の大谷地へ狩に行った。死助の方から走っている原である。秋の暮のことで木の葉は散り尽くし、山もあらわであった。向かいの峯から何百とも知れぬ狼がこちらへ群れて走り来るのを見て、恐ろしさに堪えず樹の梢に上っていると、その樹の下を夥しい足音がして走り過ぎ、北の方へ行った。その頃から遠野郷には狼が甚だ少なくなったということである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。