三河段戸山の木地屋盗伐と山火事
どんな伝承か
以前御料局の技師だった江崎林学士は、木地屋の盗伐に最も悩まされた一人だと自ら語っている。三河の段戸山の周囲はとりわけ事件が多く、盗伐に伴う山火事も折々起きて造林事業はしばしば妨げられ、少しばかりの検挙では予防できなかった。ついに根負けして、こちらから有利な条件で木地屋に土地を貸し、飛び歩かない木地屋部落を作らせて林木愛護の責任を分担させたという。村々も同じ方針から後には彼らの来住を嫌わず、次第に公民権を認めた。各府県の山村で小倉・大蔵といった苗字が以後大いに増えたのは、こうした木地屋の土着によるものだと柳田は述べる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。