高野山不動坂の押揚石
どんな伝承か
高野山の捻石からわずか上の不動坂には、弘法大師の足跡と手の跡が岩の上に残っている。老母が一念を抑えかねて押して登ろうとするなら、これを踏んで歩めと、大師が石の上に脱いで投げた神聖な袈裟に母がなお足を掛けて進もうとすると、たちまち火が燃えて袈裟を焼き尽くし、石は砕け散り、大龍が火の雨を降らせた。そのとき大師が親子の情から大きな岩を押し上げ、その下に母を隠して火の難から救ったのが押揚石で、今もその面に高僧の手の跡が付いているという。柳田は、法力の優れた人が岩に手形を残したという口碑が多いことから、この話の種を説明している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。