土佐影野村の松に腰掛ける長髪の女
どんな伝承か
宝暦五年の秋、土佐高岡郡影野村の往還の路より十間ほど山に入った所の松の枝に、髪の長さ三間余りある婦人が腰を掛けていた。村の者が集まって見ると、そのまま飛び下り、行方知れず消え失せた。下は茅原であったが、分け入った跡も見えず、草の葉一つ損じていなかったという。田中勢左衛門の書中で宝暦六年正月に申し来たった。影野は相間氏の領知で、その家来和田彦左衛門に尋ねると、昔から折々村の者が見るもので、五六尺ほどの茅原を行くとき腰から上がなお六尺余も見えたという。多くは後姿か横顔を見ただけで、正面の顔を見た者はないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。