大風の日に帰る伝三郎どうの娘
どんな伝承か
三戸郡の櫛引村にも、遠野の寒戸の婆とまったくよく似た言い伝えがあった。以前は大風の吹く日になると、村の人々は、きょうは伝三郎どうの娘が来るべ、とことわざのように言っていたそうである。神隠しに遭って行方知れずになった娘が、風の荒れる日に戻って来るという伝えである。柳田国男は、たとえ史実であってももう年数が経過し、昔話の部類に入ろうとしていると記し、風が吹くということが一つの様式を備えている上に、家に一族が集まっている折に来合わせるとあるからには、既に幾分の神の力を認めていたのだと説いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。