志津野の狗賓餅と道具紛失
どんな伝承か
中山道の美濃鵜沼駅から北へ三里、武儀郡志津野という町での話である。村続きの林を伐ったとき、山というほどの処でもなく、殊に老木が覆い繁ってもいない小松林の平山だから狗賓餅にも及ぶまいと考え、何の祭もせずに寄り合って伐り始めた。すると誰も彼もの斧の頭がいつの間にか無くなり、道具もことごとく紛失していた。これはいけないとその日は仕事を中止し、改めて狗賓餅をこしらえて山の神に詫びたところ、失せた道具がぽつぽつと出てきたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。