六角牛山の山男と餅の無言貿易
どんな伝承か
閉伊郡の六角牛山で、青笹村の某が山に入ってマダの樹の皮を剥いでいると、じっと立って見ている七尺余りの男があった。おれも助けてやろうと言い、さながら麻を剥ぐように忽ち沢山にしてしまった。それから傍の火に炙っておいた餅を指さして欲しがるので承知すると、無遠慮に皆食べてしまった。来年も来るかと聞くので、後難を恐れてもう来ないと答えると、それなら三升の餅を家の庭へ出して置いてくれ、一年中のマダの皮を持って行ってやるという。そのとおりにすると翌年、約束の日の夜中に庭で大荷物を置く音がし、馬に二駄ほどのマダの皮であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。