東京を驚かせたナイルスの宙返り飛行
どんな伝承か
日本の飛行機がまだよたよたと飛ぶのがやっとだった大正四年の末、アメリカ人のナイルスが彗星のように現れ、当時としては破天荒な横転や宙返りの飛行を日本人の前で演じて、東京の人々の度肝を抜いた。その舞台がこの青山練兵場で、のちに来日して夜間の曲芸飛行で電飾をつけた機体を躍らせたアート・スミスも、ここで飛んだように記憶すると著者は書く。二人の妙技に驚いた東京の人々は「空飛ぶ飛行機は、ナイルス、スミス」と歌い、その名は俗謡にまでなった。一方で日本の飛行将校の中には、宙返りなど曲芸師の芸で軍事には要らないと新聞で語る者もいたという。
原典より
そのヨタヨタ飛行時代の大正四年(皇紀二五七五年)末に、突如彗星のように現れて、當時としては破天荒な横轉逆轉の「宙返飛行」を我國人の前に演じて、…—— 行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年))
『行楽と史蹟の武蔵野』は、寺島裕が昭和十二年に著し、新生堂から発行した武蔵野の史跡探訪記である。狭山丘や山口貯水池の周辺から、行田・粕壁・生田・淀橋・中野・柴又・多摩御陵などの社寺、城址、古戦場、塚を歩いて訪ね、交通の便とともに由緒や伝説を記す。小橋一太と新井堯爾の序文、著者の自序を巻頭に置き、前著「史蹟の武蔵野を探ねて」に続く行楽案内として土地ごとの短い節を連ねる。