海の上に灯る狐の嫁入りと森のムジナ
どんな伝承か
南行徳の小倉わかが、少女のころを語る。正月には姉たちと四、五人で浦安へ書生芝居を観に行った。終わるのは十一時近くで、帰りは原っぱを通らねばならない。今の柳町あたりは竹がいっぱいで山もあって淋しく、その先の森は両側からかぶさるように繁って暗く、葬式があると白い提灯がゆらゆら揺れ、ムジナが出るとも聞いていたので怖くてたまらなかった。海の方を見ると「あっ、狐の嫁入りやってるよ」といって、上でも下でもない高さに火がパッパッと点いては消えた。稲荷様のあたりでも出たという。大きな津波があってから狐はいなくなった。
原典より
20 火つけとタバコ屋稲荷21 タマヤの狐22 新場の狐 (1)〜(2)23 狐に化かされた話 (1)〜(2)24 化け松 (1)〜(5)25 ムジナが化けて出た話26 いっとこ婆さん27 坊さんの財布—— 市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年))
『市川の伝承民話 第1集』は、市川民話の会が昭和五十五年に編んだ民話の資料集である。市川市教育委員会の事業として昭和五十四年度に千葉県市川市の国分・北国分・行徳・南行徳で行った採訪調査のうち、テープ起こしを終えた語りを、方言も残して話者の息継ぎのままに記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部に分けて地区別に並べ、話末に話者・地区・記録者の名を添える。