納戸に忘れられて祟った三面大黒天
どんな伝承か
宮久保の高円寺に祀られる三面大黒天の由来。明治の末年、この大黒像を持っていたのは十両まで上がって年寄となった武隈という相撲取りで、両国に住み、大正の初めに亡くなって寺に墓がある。像はもともと懇意の料理屋中村楼にあったが、店がつぶれて引き取り、床の間に飾っていた。子供たちが乱暴するので階段下の納戸にしまったまま忘れると、妻が病気になり医者にも見放された。出入りの職人が、占いをしていた話者の祖母に相談すると、尊い物を粗末にしていると告げられ、思い当たった親方が大黒を出して祀り直したところ妻の病は治った。恐ろしい大黒だから素人の家では祀れないと、祖母のいる高円寺へ奉納されたと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。