隠した餅を親恋しの歌に詠み替えた小僧
どんな伝承か
行徳で語られた和尚と小僧の頓智話。寺に小僧に出された子が、夜になると父母を恋しがって東の方を眺めては嘆き、歌を詠んで慰めていた。ある日、空腹のあまり祖師様に供えた餅をこっそり取り、墓場の隅に隠して箸を目印に立てておいた。翌朝起きると雪が降り積もり、目印の箸も餅もどこにあるか分からないと嘆く歌を口にしたところ、和尚に聞きとがめられた。小僧はとっさに、雪が降って目印の森も見えず二人の親はどこにいるやら、と親を思う歌に詠み替えて答え、和尚は納得して去ったという。昔は頓智のある子はこうしてすぐに切り返したものだと語られる。
原典より
小僧がなァ、あるお寺へ小僧に出されたとよ。—— 市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第2集(市川民話の会・市川の伝承民話・1981年(昭和56年))
『市川の伝承民話 第2集』は、市川民話の会が昭和五十六年に発行した民話資料集である。千葉県市川市の曽谷・宮久保・下貝塚と行徳の古老から聞き取った、狐や狢に化かされた話、火の玉、伝説、昔話、唄、暮らしの禁忌や苦労話を、方言を残した語り口のまま記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部を地区別に並べて各話の末に話者と記録者を記し、巻末に語り手の紹介、話者と採訪者の名簿、採訪記、あとがきを付す。