漁師に羽根をもがれた実入の天狗
どんな伝承か
天津小湊の実入の浜に沿った山に大きな松が一本あり、清澄山の天狗がよく遊びに来ていた。ある日、浜で投網を打っていた漁師が、たっぷり魚が入ったような手応えに急いで網を上げると、中身はすべて木の葉だった。首をかしげていると松の上から笑い声が降ってきて、見上げれば天狗である。仲間内で力自慢のその漁師は腹を立て、天狗に相撲を挑んだ。勝負は漁師の勝ちで、天狗は自慢の高い鼻を折られ、背の羽根までむしり取られて、命からがら山へ戻ったという。漁師が手にした羽根は、のちに天津の神明様へ納められたと伝わる。
原典より
安房郡天津小湊町実入の浜ぞいの山に、一本の大きな松の木があり、ここには清澄山の天狗が遊びに来ていた。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。