割っても元に戻る熊野石
どんな伝承か
佐倉市太田の話。新兵衛という者が紀州の熊野参りの帰り道、わらじに桃の種ほどの青い小石が挟まった。歩きにくいので捨てても、いつのまにかまた挟まっている。何度捨てても離れないので、やむなく持ち帰った。家に着くと石はほどなく長さ三尺、周囲一尺五寸ほどの茸のような形に育った。家人は驚いて庭にまつり、熊野権現と呼んだ。これを聞いた役人が淫祠だとして叩き壊すと、その役人はまもなく死に、人々は権現の祟りだといった。割れた石も翌朝には元どおりになっていたので、信仰はいっそう広まった。船橋市飯山満のある家の巾着石にも、よく似た話が伝わる。
原典より
昔、新兵衛という者が紀州の熊野参りに行った帰り、途中でわらじに桃の種に似た形の青い小さな石がはさまった。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。