境内ごと沈んだ江見の小泉院
どんな伝承か
太田南畝の『半日閑話』に、今の鴨川市江見の愛宕山のふもとにあった真言宗の小泉院という寺が、寛政二年に地中へ沈んだという記録がある。それによれば、この年の四月十日ごろから境内が揺れ始め、人々がいぶかっていたところ、十七日になって境内が突然陥没し出し、ついには本堂の屋根がわずかにのぞくだけになるまで沈んで、多くの大木も土に埋もれてしまった。このとき、住職たちは西へ逃げて助かったが、東へ逃げた人々は陥没に巻き込まれて命を落としたという。筆者はこれを房総の知られざる不安な歴史の一つとして紹介している。
原典より
地盤沈下のニュースが伝えられているが、いまの鴨川市江見の愛宕山麓にあった真言宗の小泉院という寺が、寛政二年(一七九〇)に陥没したという記録がある。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。