雄の首を抱いた雌鴛鴦と鴛鴦寺の由来
どんな伝承か
昔のことであるという。この土地に住んでいた阿蘇某が、阿蘇の沼で一羽の鴛鴦の雄を射た。その夜の夢に一人の女が現れ、悲しげに「日くればさてひしものを阿蘇の沼のまこも隠れのひとり寝ぞ憂き」と詠むのを見て目が覚めた。翌朝、沼へ行ってみると鴛鴦の雌が悲しげに浮かんでいる。そこで弓をもって雌を射たところ、雌は雄の首をしっかと抱いていたという。某は改めて哀れを催し、そのために一寺を建立して鴛鴦寺と名づけたという。「佐倉風土記」は、里人の伝えはこの通りだが、「沙石集」はこれを下野国のこととして記していると述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。