俗謡にうたわれた会呂の五ゑむ
どんな伝承か
「会呂の五ゑむが立てた臼、槍で押さずに回るまい」「会呂の五ゑむが嫁取りで、兎なますにかぼちゃ汁」「筆を取れば一つ書きの字がする」などと、安房の俗謡にうたわれる会呂の五ゑむは、石川五右衛門のような勇者ではないが、会呂の里での力自慢だったと伝えられる。ただし確かな記録は残っていない。名主でありながら饗応に兎なますとかぼちゃ汁しか出せないところに田舎の風情があらわれており、この里は今でも地中に栗しか作れないような土地だったため、御馳走といってもささやかなものだったのだろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。