浄瑠璃を語った虎猫と喉笛
どんな伝承か
遠野の家中の是川右平という人の家での話である。冬のある晩、主人が子供を連れて櫓下の芝居を見に行き、夫人が一人で炉端の縫い物をして留守をしていると、側にいた虎猫が突然人の声を出し、退屈でしょうから旦那様たちが聞いている浄瑠璃を語って聞かせましょうと言って、朗らかに一くさり語った。そしてこの事を誰にも話すなと念を押した。のち、成就院の和尚が来て、月夜の晩に自分の庭で狐と踊っていたのはこの虎猫だと話した。その夜、夫人は先夜の浄瑠璃の話を主人にした。すると翌朝、夫人は喉笛を咬み切られて死んでおり、虎猫もそれきり帰って来なかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。