沈められた踊る猫と猫渕
どんな伝承か
南会津郡田島町の長野向かいという所での話である。爺様と婆様が古い猫を大事に飼っていた。ある日、爺様が田島の芝居見物に出かけ、婆様と猫が留守番をしていると、猫が踊りをやって見せると言い出した。猫はどぶろくを出して婆様に飲ませ、踊り始めた。初めは面白かったが、あまりに上手なので婆様は気味が悪くなった。猫は内緒にしろと口止めしたが、婆様は恐ろしくて爺様に打ち明けた。爺様は猫をいじこに入れ、縄で縛って石とともに川へ沈めてしまった。そこは猫渕と呼ばれ、大水で流れが変わってもそこだけはいつも深かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。