弟の戦死とともに消えた三毛猫
どんな伝承か
弟の秀夫がとても大事にしていた大きなメスの三毛猫がいた。秀夫が学校へ行くときは家の昇り口まで見送り、帰る時刻になると同じ所へ迎えに出て、二階の梯子段をとんとんと二人で上る仲だった。秀夫が徴兵検査を受けて兵隊に行った後、三毛猫は毎日その布団の上に寝て帰りを待っていたが、ある日突然、姿が見えなくなり、とうとう帰って来なかった。戦争が終わって戦友が遺骨と日記帳を届けてくれ、昭和一九年七月一九日に二一歳でサイパン島で戦死したと知らされた。後から思えば猫が消えたのはその頃であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。