死の前夜に母が見た猫タロの夢
どんな伝承か
我が家では九年間、タロというシャム猫の雄を飼っていた。呼べば返事をし、外から帰ると玄関先でウェーと鳴いて挨拶するかのようだった。夜は人が寝るのを待ちきれず、先に二階のベッドへもぐりこんで寝ていた。去年の九月二十五日に死んだのだが、死ぬ前の晩、母はおかっぱ頭のかわいい女の子をおんぶして「死んだけどまた生き返った」と近所の人に言っている夢を見たという。タロは床の間の背の高いこけしのわきで昼寝をするのが好きで、こけしに身をかえたとも考えられる。その頃、私は仙台にいたが、前の晩、急にタロの写真を飾らなくてはという気になり、机に飾った。夢にもタロが出てきて一緒に遊んだ。タロは次の日の朝十時頃に死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。