夢で貸した白珊瑚の数珠
どんな伝承か
木之本町の農村に生まれたFの夢に、戦時中のある夜、弟が現れた。善光寺に参らないままなのが心残りだから、兄の白い数珠を貸してほしいという。承知して目を覚まし、仏壇の箱を検めると、白珊瑚の数珠が消えていた。妻も手を触れていないと言う。七日ほど後、弟はふたたび夢に立ち、念願の参詣を果たしたと告げて数珠を返した。箱の中には確かに戻っていた。同じころ従兄も夢を見ており、善光寺の本堂で弟に会い、粗末な黒い数珠は気に入らないと訴えられたという。まもなく弟の戦死の報が届いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。