骨と灰を吸って伸びた火葬場の松
どんな伝承か
故郷の村の地区の火葬場は、急な山の小道を四〇分上ったところにある。山を平たくし、石で棺を置くように「コ」の字型に石が組んである。その上に藁を敷いて棺を置き、さらに藁をおいて、喪主の手で火をつけて焼く。夜中に風で火が山の木に移らないよう小屋が立てられ、囲炉裏がある。冬の寒い時期には、ここで夜通し三日間、火葬される藁を見守るのである。三日して藁がすべて灰になり、納骨されたあとの骨は土の中に埋める。そのほとりに立った松の木が、人の骨と藁を焼いた灰を吸ってすくすく伸び、火葬場ができて七〇年で巨木になり、誰も気味悪がって伐る者がいないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。