冷水峠で大蛇を撃ち猟を捨てた祖父
どんな伝承か
秋の鹿が鳴く頃の話。広見川とひかじ川の合わさるあたりに冷水峠があり、そこへ向かって祖父の鎌之助が午後二時から三時頃に帰ってきた。連れていた犬が尻尾を巻いて股の間に入り込み、少しも動こうとしない。不審に思って一服していると、丈の低い茅がゆさゆさと揺れて近づいてくる。石を投げると大きな蛇が鎌首をもたげた。祖父は念仏を唱え、大事に取っておいた鍋あしの弾を撃った。蛇はひっくり返って落ちていき、落ち葉の折れる音がした。祖父はそれきり鉄砲打ちをやめ、噂を聞いた者に問われても語らなかった。一年ほどのち、別の男が冷水峠の北の水の湧く場所へ下りると、あたり一面に二銭銅貨ほどの鱗が束になって散らばっていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考・昭和〜平成)