生まれる子と引き換えの雉
どんな伝承か
話者の祖母が生まれる前後の頃の話。府甲部の井の窪寄りの一軒家に蔭山義蔵という男が住み、鳥や兎を捕って暮らしていた。ある年はまったく獲物に恵まれなかったが、大きな蛇が雉をくわえて今にも呑もうとしているのを見つけた。妻が身重だったので、子が生まれたらやるからその雉をよこせと持ちかけると、蛇は弱った雉を生きたまま放した。やがて子が生まれたある日、低い草葺きの軒から蛇が頭を垂らして舌を出しているのを見た義蔵は、約束の子を取りに来たと思い、家の中から一発で撃ち殺した。運べないので七つに刻んで谷へ捨てると、その年は銀蝿がわいて臭ったという。義蔵はのちに喘息のような病になり、毎年四国を巡ったが治らず死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。