忘れた巾着を守ったトンネル地蔵
どんな伝承か
だいぶ前のこと、柏尾の村人がテングサ採りに潜ると、岩の間に首のない地蔵が沈んでいた。拾い上げて首を付け、間島との境のトンネルのそばに祀った。この地蔵を信心する老女が、賽銭を上げて拝んだあと巾着を置き忘れ、村上の町まで来てやっと気づいた。そこは人通りが多く、海水浴客でにぎわう場所で、巾着には大事なへそくりが丸ごと入っていた。老女は、巾着を別の物に見せておいてほしいと一心に祈りながら夕方に引き返したが、巾着は元の場所にそのまま残っていた。地蔵が蛙か花に見せてくれたのだと信じ、いまも毎日欠かさず拝みに通っているという。
原典より
大分前のこったども、柏尾の村の者がテングサ採りに海へ潜ってたば、岩の間に首の無え地蔵サマ沈んでいたんで、拾できて、首くっつけて、間島境にあるトンネルのそばへ祀っておいた。—— 村上市史 民俗編 下巻(村上市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村上市史 民俗編 下巻(村上市史)
『村上市史 民俗編 下巻』は、新潟県村上市の市史の民俗編から、口承の節(伝説・世間ばなし・謎とことわざ)を抜き出したものである。地名・神社・寺や仏・地蔵・水・人・動植物・塞の神・杖の跡に分けた伝説と、狐や河童、火の玉、山の神などの世間ばなしを、土地の言葉の語りのまま採集地を添えて収める。義経が跳び越えた一跳山、三面川の小助島、岩船の大火など、村上市内の土地に結びついた話が中心である。