蠣崎氏の一行を導いた松の灯
どんな伝承か
むつ市角違の浜は明治のころまで今より六十メートル以上も沖へ張り出し、砂浜に沿って樹齢数百年の松が並んでいたという。昔、蠣崎氏がはじめて下北へ入ったとき、この辺りに来たのは夜更けで、明かりも持たず道にも不案内で困っていた。すると前方の松の梢にいくつもの灯がともって辺りを照らし、一行はその光を頼りに急ぎ、その夜のうちに蠣崎へ着いた。後に殿様は灯をともした者を村人に尋ねたが誰も知らず、神々の加護と考えて松を霊木とし、伐ることを禁じた。この禁は長く守られたが、今では浜の松も岡の松も残っていないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。