猫に憑かれた梅次と縁の下の死骸
どんな伝承か
斑猫が来なくなっても、柳原の桔梗家に預けられた梅次の病は治らなかった。やがて梅次は四つ這いで階段を跳ね上がり、猫の鳴き声をまねて笑い、台所の残り物や生魚を手づかみで食べるようになった。厠の屋根に髪の長い女が立っていると若い芸妓玉奴が叫んで気を失った夜には、姿を消した梅次が髪を振り乱して屋根の端に立っていた。稲荷下ろしの祈祷も効かず、梅次は八月中ごろ夢野の精神病院へ送られ、猫娘とあだ名された。その後、古座敷に死臭が満ち、縁の下を探ると梅次の寝床の真下で例の斑猫が死んでいた。猫を葬ると梅次はいったん回復したが、十一月に再び怪しい病にかかり、京に近い親元へ帰されて二十一歳で亡くなったという。
原典より
果たして其の斑猫が白い斑を上(うえ)にして、死(し)んでゐるのであつた。—— お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂))
『お化と幽霊 怪談揃ひ』は、播州を中心に摂津・淡路・大阪・神戸の怪異を集めた怪談集である。神戸のチャブ屋に残された下女の片足の靴、明石の坊主橋に出る按摩の怨霊、西瓜に浮かぶ女の顔、淡路洲本の白壁物語、西宮のねてこが池の怪などを、地名と人名を挙げて講談調で語る。三十余りの話を並べ、天保や明治九年の出来事とする話のほか、寄せられた原稿によるとことわる話も含む。