津波てんでんこが救った三千人
どんな伝承か
岩手県には「津波の時はてんでんこ」という言葉がある。津波が来たら、取るものもとりあえず肉親にも構わず、各自てんでんばらばらに一人で高台へ逃げろ、自分の命は自分で守れ、という意味で、一九九〇年に開かれた第一回「全国沿岸市町村津波サミット」で防災標語として紹介された。自分だけが助かって他人を助けられなくても非難しないという不文律でもあり、互いを探して共倒れするのを防ぐ意味だと理解されている。東日本大震災では、この教えを守った岩手県釜石市内の小中学校で、全児童・生徒の約三千人が即座に避難し、生存率九十九・八%という成果を挙げた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
震災後の不思議な話-三陸の怪談(宇田川敬介)
『震災後の不思議な話-三陸の怪談』は、宇田川敬介が著した東日本大震災の被災地の怪異談集である。復興の手伝いで通った三陸の人々から聞いた虫の知らせや生死を分けた出来事、津波の犠牲者の霊、タクシーの幽霊などの話を、津波の言い伝えや『遠野物語』、オシラサマ伝説とあわせて記す。全体を「迫りくる危機と虫の知らせ」から「見守っています」までの四幕に分け、「おわりに」で取材の動機と、話者の名や地域を伏せた方針を述べる。