源兵衛渕の鰻と蜘蛛の合戦
どんな伝承か
仙台市米ケ袋、御霊屋橋の川下二十メートルばかりの左岸崖下に、水涸れの時でもとろりと蒼い渕がある。これが源兵衛渕である。昔、渕の崖上に源兵衛という者が住んでいた。ある年の梅雨のころ、夜更けに若い女が訪ねて来て、自分はこの下の渕の主の鰻だが、明晩、川上の賢渕の主の蜘蛛と一騎討をしなければならない、その時「源兵衛ここに控えおるぞ」と声をかけてくれれば勝てると頼んだ。翌晩、雷鳴と風雨の中で鰻と蜘蛛の大合戦が始まったが、源兵衛は恐ろしさに声をかけられなかった。夜が明けると渕は一面血に染まり、噛み切られた大きな鰻の首が源兵衛の家の方を睨んで浮いていた。源兵衛は気が狂って死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。