竹刀の魚を奪った武芸者風の大男
どんな伝承か
藩政の世、角田の館主石川家に仕え館矢間に住む若侍たちは、城下の撃剣稽古の帰りに魚などを提げているとよく狐に化かされた。あるとき血気の者たちが、竹刀の先へ魚を結んで夜道を無事に帰れるかどうか賭けようと言い出した。名乗り出る者はなかなかいなかったが、威勢のよい一人が引き受け、魚の包みを結んだ竹刀を担いで出かけた。薄月の並木道で、同じく竹刀を肩にした武芸者風の大男とすれ違いざま、鋭い気合とともに上段から打ち込まれた。若侍は思わず担いだ竹刀で受け止める。大男はそのまま消え、気づけば竹刀の先の魚だけがきれいに失せていた。隠れて後をつけていた仲間たちは手を叩いて喜んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。