生きたムカデまで食べた悪食の実験
どんな伝承か
ある日、東京の小石川区駕籠町にある栄養研究所へ、田舎者らしい洋服の男が訪ねてきて、所長の佐伯博士に面会を求め、自分は何でも食べる、蝶でも蛇でもムカデでも千六百種ぐらいは食べてみたと語った。博士は驚き、では実験しましょうということになった。同月二十九日午後、同所で悪食の実験が行われた。この男は宮城県伊具郡桜村の農、熊谷政治(三十六)で、持参した柳ごりの弁当から二、三寸の緑色の芋虫をつまみ上げてぺろりと食べ、季節物で今が食べ時だと言った。続いてみの虫、黒いクモ、貝殻虫の子、紋白蝶、カブト虫の幼虫、ワラジ虫を食べ、最後に生きたムカデを食った。立会の一同は青くなったり赤くなったりしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。